食事のウソ?ホント?人に良い食べ物は犬には悪い食べ物?

餌を食べる犬

最近、愛犬のための手作りレシピが話題ですよね。本やネットでもたくさん見かけるようになりました。「うちの子に手作りごはんを」という飼い主さんの気持ち、よくわかります。でも、ちょっと注意が必要かもしれません。 人間の食事と、ペットの食事は違います。私たちにとって健康的な食べ物が、 必ずしもワンちゃんに良いとは限らないです。実は、ペットの栄養バランスって、意外と難しいもので愛情だけでなく、正しい知識も大切なんです。そこでこれから、犬の食事について、 よくある勘違いや、知っておきたい情報をお話ししていきます。大切な家族の健康のために参考にしてみてください。

目次

必要な栄養素の違い

私たちと同じように、犬や猫は、タンパク質、脂質をはじめ炭水化物・ミネラル・ビタミンなどの栄養素を食べ物から取り入れなければ健康に生きることができません。しかし、犬と猫では必要な栄養素の割合に大きな違いがあります。

犬と猫では必要な栄養素の割合

環境省自然環境局:パンフレット「飼い主のためのペットフード・ガイドライン~犬・猫の健康を守るために~」

たんぱく質

人と犬猫では必要とする栄養要求量に違いがありますが、その中でも代表的なものがたんぱく質です。
成人の食事の栄養量を1としたとき、犬猫は、人の約2~2.6倍のたんぱく質が必要とされています。
たんぱく質は、筋肉・皮膚・ホルモンなど、からだの構成や調節機能に関わる主要な成分であり、様々な種類のアミノ酸が集まってできています。

人と犬と猫のタンパク質摂取量の比較のグラフ

環境省自然環境局:パンフレット「飼い主のためのペットフード・ガイドライン~犬・猫の健康を守るために~」

炭水化物

炭水化物は、ペットフードの主要な成分の一つですが、その役割は意外と複雑です。大きく分けて、糖質食物繊維の2種類があります。

糖質:エネルギーの源

  1. 基本的な役割
    • 体内でグルコース(ブドウ糖)に分解されます。
    • このグルコースが、体のエネルギー源として使われます。
  2. 他の重要な機能
    • 血液中の糖(血糖)として存在し、体全体にエネルギーを供給します。
    • 体の様々な部分の構成材料としても使われます。
      • 例:核酸(遺伝情報を担う物質)や脂肪の一部
    • ビタミンCの合成にも必要です(ただし、犬や猫は自身で合成できます)。

食物繊維:消化管の健康維持

  1. 特徴
    • 体内の消化酵素では分解できない炭水化物です。
  2. 主な働き
    • 消化管内の環境を整えます。
    • これは犬にとっても重要な役割です。

脂質:エネルギー源以上の重要性

脂質は単なるエネルギー源ではありません。犬の健康にとって以下の重要な役割があります:

犬にとって特に重要なのはリノール酸です。
エネルギー供給:体内でエネルギーとして使用されます。
ビタミンの吸収補助:脂溶性ビタミンの吸収を助けます。
必須脂肪酸の供給:体内で作れない重要な脂肪酸を提供します。

犬の消化と食事

餌を食べる犬

犬と人間の消化の違い

  1. 歯の形状と役割
    • 人間:すりつぶしやすい形の歯を持ち、食べ物をよく噛んで小さくする
    • 犬:鋭い歯(特に犬歯)を持ち、食べ物を切り裂くように食べる
  2. 唾液の働き
    • 人間:唾液に消化酵素が含まれ、口の中で食べ物の分解が始まる
    • 犬:唾液に消化酵素がなく、主に食べ物を飲み込みやすくする役割
  3. 消化器官の特徴
    • 人間:腸が比較的長く、様々な食べ物を消化できる
    • 犬:腸が人間より短く、特に繊維質の多い食べ物は消化しにくい

犬の食事における注意点

  1. 塩分控えめに
    • 犬は汗で塩分を排出できないため、人間の食事は塩分が多すぎる
    • 塩分の多い食べ物は避けましょう
  2. バランスの取れた食事を
    • 人間の食べ物をそのまま与えると、犬に必要な栄養バランスが崩れる可能性がある
    • 犬用に調整されたフードを選びましょう
  3. 甘いものは控えめに
    • 犬は甘いものが好きですが、与えすぎると肥満の原因に
    • おやつは適量を守りましょう
  4. 規則正しい食事を
    • 1日2回に分けて食事を与えるのが理想的
    • 決まった時間に食事を与える習慣をつけましょう
  5. 新鮮な水を常に
    • 清潔で新鮮な水を常に用意しておくことが大切
    • 水を飲みやすい環境を整えましょう

犬の食性:肉食と雑食の狭間で

犬の食性について正しく理解することは、愛犬の健康管理に欠かせません。一般的に「雑食性」と言われる犬ですが、その実態はもう少し複雑です。

犬の食性の特徴

  1. 肉食に近い雑食動物
    • 犬は雑食動物ですが、その本質は肉食に近いです。
    • 祖先である狼の食習慣が、現代の犬にも受け継がれています。
  2. 多様な栄養源
    • 植物性と動物性、両方の食べ物から栄養を摂取できます。
    • この能力により、様々な環境に適応してきました。
  3. 肉中心の食事が理想的
    • 犬の体は主に肉からタンパク質を効率よく摂取できるよう進化しています。
    • 食事の中心は肉や他の動物性タンパク質源であるべきです。
  4. 穀物や野菜も摂取可能
    • 肉が主体ではありますが、穀物や野菜も適度に摂取できます。
    • これらは食物繊維やビタミン、ミネラルの補給に役立ちます。
  5. 人間との違い
    • 人間が雑食性が強いのに対し、犬は肉食性が強いです。
    • この違いは、それぞれの消化システムの違いにも反映されています。

人間の食べ物が犬に与える影響:知っておくべきリスク

えさを欲しがる犬

愛犬に人間の食べ物を与えたくなる気持ちはよくわかりますが、実はそれが思わぬ健康問題を引き起こす可能性があります。以下に、人間の食べ物が犬に与える影響をまとめました。

1. 脂肪分の過剰摂取

  • 人間の食事は犬にとって脂肪分が多すぎることがあります。
  • 例:フライドチキン、ポテトチップス、ベーコンなど
  • リスク:肥満、膵炎

2. 消化器系への悪影響

  • 人間の食べ物を与えると、犬が嘔吐や下痢を起こす可能性があります。
  • 特に、急に人間の食べ物を与えた場合や、刺激の強い食べ物を与えた場合に起こりやすいです。
  • 例:スパイシーな食べ物、乳製品(犬の中には乳糖不耐症のものもいます)

3. ナトリウム(塩分)の過剰摂取

  • 人間の食事には、犬にとって過剰なナトリウムが含まれていることが多いです。
  • 例:加工肉、インスタント食品、スナック菓子
  • リスク:脱水、高血圧

4. 消化の難しさ

  • 犬は人間の食べ物を消化するのが難しい場合があります。
  • 犬の消化系は人間とは異なり、特定の食べ物を処理する能力が限られています。
  • 例:高繊維の野菜、複雑な調理をした食品

5. 栄養バランスの乱れ

  • 人間の食べ物を与えることで、犬の栄養バランスが崩れる可能性があります。
  • 犬用のフードは、犬の栄養需要に合わせて慎重に調整されています。
  • 人間の食べ物を与えると、特定の栄養素が不足したり、逆に過剰になったりする恐れがあります。

犬が食べてはいけない危険な食べ物

犬には特定の食べ物が有害であり、摂取すると中毒症状を引き起こす可能性があります。以下は、犬にとって特に危険な食べ物のリストです。

1. チョコレートとココア

  • 含有成分:テオブロミン
  • 危険性:下痢、嘔吐、重篤な場合は死亡の可能性
  • 注意点:ダークチョコレートは特に危険性が高い

2. ブドウとレーズン

  • 危険性:急性腎不全
  • 注意点:少量でも危険であり、注意が必要

3. ネギ類(玉ねぎ、長ねぎ、にんにくなど)

  • 危険性:赤血球の破壊、貧血、呼吸困難
  • 注意点:加熱しても毒性は消えないため、調理済みの食品にも注意

4. キシリトール

  • 危険性:低血糖、急性肝不全
  • 注意点:砂糖の代替品として使用される人工甘味料で、非常に危険

5. アボカド

注意点:果肉だけでなく、種や皮にも毒性がある

含有成分:ペルシン

危険性:呼吸困難などの重篤な症状

最後に

「人に良い食べ物は犬にも良い」というのは、大きな誤解です。犬と人間では消化システムや栄養需要が大きく異なるため、人間の食べ物をそのまま与えることは危険を伴います。愛犬の健康を守るためには、犬の特性を理解し、適切に調整された食事を与えることが重要です。また、一部の人間の食べ物は犬にとって有毒であり、絶対に与えてはいけません。

愛犬との豊かな生活のためには、正しい知識に基づいた食事管理が不可欠です。疑問や不安がある場合は、必ず獣医師に相談しましょう。適切な食事と愛情のこもったケアで、愛犬との幸せな時間を過ごしていきましょう。

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